なんとなく日誌

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Oculus GOで8K画像、12K画像を楽しめるんだろうか?

※この記事は、主に風景動画、風景写真などの実写VRを楽しむことを主目的として書かれています。
ゲームプレイのためのVRとは評価軸が異なるのでご注意ください。

※ググってもこのあたりの解説がなかったので、十分な専門知識が無いことを承知の上で計算してみたという記事です。
間違いを含むかもしれません。もし間違いがあったらご指摘ください。

解像度、というより画素密度の話

(日本では買えないものが多いけど)現在、多種多様なゴーグルが発売されている。
画素密度で比較するとOculus GOの画素密度(ppi)は538で、VIVE PROのppiは615。
現実と見まがうレベルには3000ppiほど必要で、現状では全然足りていないそうだ。
でも3000ppiのゴーグル向けのコンテンツを作るには、何Kの画像が必要なの?
逆に今のゴーグルだと何K画像まで表現できるの?
Oculus GOで8K画像や12K動画を楽しむことはできるんだろうか?
ぐぐってもよくわからない。

ぐぐっても分からなかったので計算してみる

しかたないので大雑把に計算してみる。
専門知識を持たないなので見当違いなことをしているかもしれない。
もし詳しい人がいたら突っ込んでくれると嬉しい。

まず、Oculus GOを基準に考えてみる。

Oculus GOの片目解像度は1280×1440だが、単純化のために水平方向の画素数1280だけを考える。
360°画像をVRで見ると元画像であるパノラマに補正をかけた形で表示されるが、赤道面上の画素(ピクセル)には補正がかからないからだ。
Oculus GOの片目視野角を左右90度と仮定する。正確な数字が分からないので、おおよそである。
すると、全周囲にわたってOculus GOが表示できる画素数は
	1280×360÷90=5120
となる。
よって、Oculus GOが表現できる画像は5.1Kまでとなる。

単純に計算すると、このような結果になる。
同じように計算すると、HTC VIVE PROでも5.7Kまでしか表現できず、コンシューマー向けで最大であろう画素密度のHP Reverbで8.6Kとなり、やっと8Kを超える。
(Pimax5k+は解像度が上がった分視野が広がっていて、画素密度はあまり上がっていない。Pimax8Kは画素密度も上がっているものの、アップスケーリングしているだけで内部解像度は5k+と同じらしい)

現状のVRゴーグルに8K以上のコンテンツは無意味なのか?

ここまでの計算では、Oculus GOで8Kコンテンツを見ても無意味に思える。
だが、この計算にはレンズの歪曲収差を含めていない。

歪曲収差ってなにさ?

レンズを通して何かを見ると、歪んで見える。
視界の全てをレンズが等倍に拡大してくれれば歪まないのだけど、実際にはレンズの中央と周辺部では拡大率が違うので、ぐにゃりと歪んだ像が見える。

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糸巻き型の歪曲収差
これが歪曲収差である。
歪曲収差の無いレンズを使えたらそれが一番なのだけど難しいので、現実的には表示される画像を変形させることで対応している。
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歪曲収差の補正
(画像はImpressから)
要するに画像周辺部が引き伸ばされて見えるのなら、元画像の周辺部を縮めておいて相殺しようということだ。
だけど画像を縮めるだけでは画像サイズは小さくなり、劣化してしまう。
ということでVRゴーグルに表示される画像は、元画像より画質が落ち、劣化したものになる。
画像の劣化が発生しないように歪曲収差補正をかけるには、Oculus GOの解像度より大きな解像度の画像を用意し、歪曲収差補正をかけた結果がOculus GOの解像度と一致すれば良い。
(正確には視野中央部だけ劣化のない解像度で表示される)

結局、Oculus GOは何K画像まで表現できるの?

ということで、歪曲収差を考慮するとOculus GOの解像度(水平全周5K)を超える解像度の画像を用意しても無駄にはならないようだ。
具体的な計算式は十分に理解できなかった(ザイデル収差とかBrown–Conrady モデルとか)けど、こちらのページによるとValve社(Steam)の開発者が「VRゴーグルの1.4倍の内部解像度」を推奨しているそうだ。
【VR】内部解像度 (Super Sampling) で VR 体験はどれだけ変わるのか? - JoyToKeyにはあまり関係のない話
https://www.youtube.com/watch?time_continue=362&v=ya8vKZRBXdw
なので、Oculus GOでは

	5120×√1.4=6058

約6Kまでは解像度を上げる意味がある。
同様にHTC VIVE PROでは6.8K、HP Reverbでは10.2Kまで解像度を上げる意味がある。
結局、先ほどの計算より水平方向に2割ほど大きい数字になった。
(ゴーグル内臓のレンズによって歪曲収差の係数が違うので全てがこの通りではない)
(※なお、アプリによってはそもそも4Kより大きい解像度に対応していないらしい。その場合、元画像の解像度によらず4K相当まで画質は落ちてしまう。)

うーん?

この数字は、どう評価したらいいんだろう?
実際にOculus GOで4K360°風景画像を見て、「あれ?思ったより粗いな」と思った人は少々がっかりするかもしれない。
Oculus GOで表現できるのは6K画像までなので、12K画像ならもっと綺麗に見えるのかも!という期待は裏切られてしまった。
それどころか、ハイエンドのHTC VIVE PROですら6.8Kがやっと。
12Kの画像や動画は、現状ほぼ無意味だ。
風景画像を存分に楽しむにはまだVRゴーグルの画素密度が追い付いていないらしい。
ゲームではあまり気にならないのだけど、風景画像は現実と比較しちゃうからね。
HP Reverbが発売されれば、10.2K画像まで表現できるのでかなり改善されるかもしれない。
現実と同等と言われる3000ppiに対応するには36Kくらいの画像が必要になるのかな?まだまだ遠そうだ。


8K、12Kコンテンツは充実してるの?

現状のVRゴーグルが8K、12Kコンテンツに追いついていないことは分かったけど、コンテンツ側はどうだろう?
8K、12Kコンテンツは充実してるんだろうか?
(ゲームは除く)

VR動画の場合

たぶん、一番手軽にVR360°動画を見られるのはYoutubeだろう。
Oculus GOにもデフォルトでYoutubeVRというアプリが入っていて、360°動画を楽しめる。
たぶん360°動画には4K解像度のものが多いけど、8K動画も結構あって、最大はたぶん12Kなのかな?
ただし、Oculus GOでは4Kまでしか再生できない。
8Kまで再生できるアプリもあるが、かなりギリギリらしい。
これは最近発売されたOculus Questでも同じらしく、現時点で8K以上の動画を見るにはPC接続タイプのVRゴーグルが必要になる。

ちなみに4K解像度がどの程度の綺麗さかというと、これくらい。

f:id:noroUE4:20190525062500j:plain
藤?
360°動画の場合は全天球あわせて4K解像度なので、視野に入っている部分の解像度はフルHD以下になってしまう。
4Kなんだから4Kテレビくらい綺麗なんだろう、と思っているとがっかりする。
風景に期待してVRを買った人は、もっと高解像度が欲しくなるだろう。

VR360°静止画コンテンツは少ない?

VR動画サービスは結構いろいろあるみたいだけど、VR静止画サービスは少ないかも?
最も有名なのは、Googleストリートビュー
4K以上で撮影されていて、上限は不明。
一眼レフで撮影してつなぎ合わせたものもあり、場所によってはかなり高い解像度で撮影されていると思われる。
祖国ジンバブエの「ストリートビュー」を自腹で撮影--何が彼を突き動かしたのか - CNET Japan
こちらのインタビューによると、ジンバブエのHarareなどのストリートビューが12Kで撮影されているようだ。(Insta360 Pro 2)
www.google.com
動画と違い、ストリートビューは12K画像でも表示することが可能。

ちなみに、他に有名どころではgala360というVR旅行アプリがある。
比較的クオリティが高いと言われていて、世界各地の写真(6K解像度)が楽しめるようだ。
6K解像度はちょうどOculus GOで表現できるギリギリのサイズなので、ちょうどいいラインを攻めてるのかもしれない。

Theta360.comで対応しているのはスマホVRのみで、PCVRやOculus GOには対応していないようだ。残念。

つまり

現状で8K、12Kに対応しているコンテンツは、ほぼYoutubeGoogleストリートビューの一部だけ。
(調べ方が悪いだけで、実はいろいろあるのかもしれないけど)
将来的にはともかく、現在は高解像度コンテンツが充実してるとは言えなさそうだ。
逆に言えば既存のコンテンツを楽しむにはOculus GO程度の解像度で十分とも言える。
VRゴーグルの進化とともに、高解像度コンテンツが充実するのを待つ必要がある。

とはいえ、解像度が高ければいいというわけでもない。
解像度が高くてもボケていたり、カメラの性能の差で解像感が良くない、発色が悪いなど大きく違いが出る。
それだけでなく、天候によっても印象は大きく変わる。
解像度が高いのに残念画質ということもあるので、360°風景画像を楽しめる時代が来るまでにはコンテンツ側の課題も多いのかもしれない。
(カメラの性能、どこまで上がるのかなあ?)

※余談:Wanderアプリは読み込みが遅い?

Google公式のストリートビューはOculus GOに対応していない。
だけど、「Wander」というアプリを使うことでストリートビューが使える。(Google非公式)
このWander、非常に評価が高い。
Oculus GOを買ったら、最初に購入するべきアプリと言われる。
ただし、それは一般的な街中を見る場合。
街中は4K程度で撮影されていることが多いのでそれほど問題にならない(6秒程度)のだけど、8K、12Kで撮影されたストリートビューでは読み込みが明らかに遅くなり、20秒~45秒程度かかってしまう。
これではストレスが大きく、十分に楽しむことができない。
SoCの能力的にはここまで遅くならないはずなので、Wanderアプリに問題があるか、非公式アプリなのでGoogleからの通信速度が制限されていたりするのだろうか?


ちなみに、8K以上のストリートビューは道路から外れた景勝地に多い。

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ストリートビュー
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モンブラン
先に挙げたジンバブエなどの例外もあるが、たいていの街中は4K程度で撮影されている。